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第6回環境勉強会リポート:「2025 PROJECT- 2025年の持続可能な社会をめざして」(2009/6/3)

  • 2009年7月22日 17:35

ゲスト:有限責任中間法人 2025 PROJECT
プロデューサー/ディレクター   福井 崇人 氏


第6回の環境勉強会は、2025年の持続可能な社会をめざしてNPO“2025 PROJECT”を
立ち上げ、活動されている福井崇人さんをお招きしました。
福井さんは、大手広告代理店の現役クリエーターでもあり、これまで宮崎あおいサンや川嶋
あいサンといった、エコ・コンシャスな著名人と数々プロジェクトを手掛けてこられた超先駆者
でもあります。
多忙な広告代理店に勤めながら、社外で様々なエコ系プロジェクトを“ハイブリッド”で手掛け
てこられた経験談をお伺いし、これからのビジネス、プロジェクト等に大いに示唆を受けること
ができました。 
当日は約40名のお申込みがあり、これまでの最高の参加者で会場がいっぱいとなりました。


■お話のポイント
 ・環境、社会貢献活動に取り組むことになったきっかけ
 ・これまで取り組んで来たプロジェクトの話
 ・2025 PROJECTについて
 ・まとめ:いつも気に掛けていること
 ・Q&A

 

 No6MrFUKUI01090603.JPG

 大型スクリーンの設置、インテリアの改装がされた勉強会会場
   =青山一丁目「BARym(バー ウーム)」

 

◇環境、社会貢献活動に取り組むことになったきっかけ
 活動に取り組む大きなきっかけとなったことは、2つあります。
 1つは、出身地が兵庫県尼崎市であったということです。子供の頃の尼崎は、まるで公
  害のデパートのようなところでした。近くの川は非常にきたなく(高さ2mくらいの洗剤
  の泡が立ち)、学校に行っても、光化学スモックで外に出られない時もあり、新幹線や飛
  行機の騒音、海岸は地盤沈下等など。自分の生活にエコのようなものを取り戻したいとい
 うDNAが、徐々に育っていたのではないかと思います。
 2つ目は、ある公立の小学校のプロジェクトに係わったことです。当時の公立学校の多
 くは、学級崩壊や多くの先生が辞めるなど、学校を取り巻く環境がひどかった。そこで
 クリエイティブの立場で外から新しいことが出来ないかと色々と考えました。1999年、
 総合学習の時間を使って出前授業を始めました。授業の内容は「ポスターの形をした教
 材を作る」。学校で起こっている色々な問題を、生徒みんなで考える教材をポスターとい
 う形で作りました。仕事の合間にこの活動を約2年間やって得られたことは、子供達が
 何を考えているのかというのがポスターというツールを使って具象化、カンセリ
 ングになったこと。また、この活動をきっかにコミュニケーションの手法が、校長先生
 をはじめ関係者の伝播したことでした。


◇これまで取り組んで来たプロジェクトの話
 ①NGOワールド・ビジョン・ジャパン「難民キャンプに古着を送るキャンペーン」
  予算がないので、アイデアでジャンプすれば多くの人に告知できるのではないかと考
  えた。
  1年目(2001年):青一色のポスターの真ん中に両面テープを貼って、そこに古着を
  貼ってもらう立体ポスターを作った。つまり主催者と参加者が一緒にならないといけ
  ないというコンセプト。結果、11万着の古着を集めることができた。
  2年目(2002年):要綱が書いてあるチラシを剥がせるポスターを作った。チラシを
  全部剥がすと、メッセージが書かれた本来のポスターが現れるというものを作った。
  また、NGOと教育機関とがコラボレーションするという実験も行った。母校の美大
  に協力を仰ぎ、古着でポスターを作って街に貼るというもの。
  この教育機関とのコラボの狙いは、NGO・NPOは、予算がないので「学生が作っ
  た古着のポスターを貼る場所を提供して下さい」というメッセージを全国の新聞社や
  雑誌社にプレスリリースを流して、認知をしてもらおうというもの。
  ほとんどの新聞社の取り上げていただき、広告費に換算すると1億円以上にもなりま
  した。結果、過去最高の40万着の古着が集まりました。
  3年目(2003年):「国際貢献って意外と簡単じゃないか」というテーマで、初めて
  4色刷りのポスターを作ることができた。3年間で約100万着の古着が集まりました。

 ②スカンジナビア政府環境局「グリーンサンタ」
  予算を掛けずにインパクトを与える事例です。北欧の観光誘致が目的のプロジェクト。
  いろいろアイデアを考えていくうちに、世界一有名な著名のサンタクロースを使
  うことを思い付きました。「地球のことを考えて、サンタもグリーンになったんじゃ」
  ということで、グリーンサンタ=環境親善大使で、公認サンタに訪日していただき、
  学校などでレクチャーをしました。
  このプロジェクトの時期に、スウェーデンに環境視察に行き、その先進性に人生がわ
  るくらいに感動し、ショックを受けました。


 ③グリーンピース「NO WARプロジェクト」
  イラク戦争(2003年)の時、戦争は最大の環境破壊、だからNO WARプロジェクト。
  プロジェクトに取組む時に必ずやることは、“マークとスローガンを作る”こと。
  子供から大人まで分かるスローガンということで、“NO WAR”。
  日本では反戦デモに抵抗感があったので、“ピースパレード”という言い回しとした。
  それまでの反戦デモは、ニューヨーク100万人、ローマ200万人、ロンドン30
  0万人、そして東京がわずか5000人。“ピースパレード”としては、この数字的な
  ものに成果があるのではないかた考えた。結果、4万人もの人が集まってテレビや新
  聞に沢山取り上げていただきました。

 ④環境省+NPO「100万人のキャンドルナイト」「100万人の環」
  今でも続いていて、多くの人が知っているイベントとなった「100万人のキャンドルナ
  イト」ですが、これは行政とNPOがコラボレーションしたソーシャルアクトがどの
  くらいの規模になるのかというプロジェクトの事例です。スローガンは「電気を消し
  てスローな夜を」。当時は、「電気を消してCO2を減らしましょう!」では理解が
  得られず効果が出せないと思ったので、「電気を消せば夜空が見えるでしょう!」と
  言ったスローライフ、ライフスタイルに訴えることにした。結果として全国で500
  万人も参加するソーシャルイベントになった。
  副次的なこととして、このイベントを上手に営業(観光客誘致)に活用するところも
  出てきた。石垣島では、その日信号機を除いて、全島ライトダウンすることによって、
  「天の川」がすばらしく良く見えるようになりました。是非、石垣島に観光に来て
  下さいというもの。単なるイベントだけに終わらせず、島のビジネスの活性化にも活
  用した素晴らしい企画だと思います。
  2年目に、事務局より女性タレントを使いたいということで、宮崎あおいサンに依頼
  したのが、宮崎さんとお知り合いになるきっかけとなりました。

 

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   マイクを持つのが、講師の福井氏

 


◇2025 PROJECTについて
 きっかけは、「環の国くらし会議」の分科会のメンバーとして参加して、座長の東京
 大学山本良一先生と知り合ったのが一つのきっかけでした。その会でいろいろなアイ
 デアを出させていただいた中の1つに、エコアイドルを作ろうというアイデアを出し
 たところ、会議で非常に盛り上がりました。当時アメリカではエコセレブという言葉
 で、ディカプリオやブラッド・ピットなどの人達が自分の資産でエコ活動をやられて
 いたので、それを日本でもできないかと考えて、始めたものです。

①最初のプロジェクト「たりないピース(平和・欠片の2つの意味を持つ)」
 このプロジェクトは、宮崎あおいサンとお兄さんの将サンのご兄妹でインドの貧
 困・フェアトレードをテーマとしたチャリティーブックを作って、その兄妹の印税の
 すべてを、現地でお世話になったNGOに寄付したものです。
 2冊目は「たりないピース2、Love,Piece & Green」。IPCC(気候変動に関する
 政府間パネル Intergovernmental Panel on Climate Change)の発表があったり、ゴア
 さんがノーベル平和賞を受賞した年だったので、環境をテーマにした本を作りました。
 この本は、書籍ではおそらく初めてのカーボンオフセット付の本にしました。

②「トラ保護」を阪神タイガース岡田元監督と行う。“Tigers save Tigers !”
 いろいろな業界の方にエコセレブになっていただくことによって、その方の特性を
 いかした表現が面白くなるのではないかと思っていました。野生のトラが5000頭
 しかいない。甲子園球場が満員になると5万人なる。その1/10しか野生のトラが
 いない。こういったことをアウトプットすると、インパクトがあるのではないかとい
 うことで、阪神タイガースの岡田監督にご相談しました。快諾をいただき、プロジェ
 クトをスタートしました。内容は阪神が1勝すれば、ドネーションキット(トラの保
 護に当たる現地のレインジャー要員の費用)を1つ送るもの。3年間で240勝した
 ので、240人のレインジャーが誕生しました。

 ③「途上国に教育支援」を川嶋あい(ミュージシャン)サンと行う。
  幼い頃に両親を亡くした川嶋あいサンに協力をいただいて、途上国への教育支援を
   dffのクリック募金を1クリックすると川嶋さんの「かけら」という曲が45秒流
  れて1円の寄付されるもの。また、川嶋さんの印税の全てが途上国の学校支援に寄
  付さ れる書籍「大丈夫だよ」の発行も行いました。

◇まとめ:いつも気に掛けていること
 「デザインはコミュニケーションのツール」の1つにしかすぎない。
  →「コミュニケーションは本質価値」だと思う。
  →「コミュニケーションはエコ」じゃないとダメだと思う。
  コミュニケーションにお金を掛けてしまうことは、結果、エネルギーを浪費して
  しまうことに繋るので本末転倒だと思う。
 
  プロジェクトを作る時の3つのルール
  ①新しいか?
  ②ステークホルダーが幸せになるか?
  ③持続可能か?

 こんな世の中だから、生き方も働き方もハイブリッドにして、いいとこ取りして行かな
 いとなかなか前進出来ないと思っています。

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◇Q&A
 Q1)「ハイブリッドで行かなきゃ」ということは、いい提言だと思いました。しかし
    ながら、サラリーマンの本業と仕事以外のソーシャル、エコロジー活動の両立は、
    実際には相当難しいと思いますが、それらを両立するノウハウ、メソッドがあれ
    ば教えて下さい。
  A1)例えばプロジェクトを始めるときは、トラ保護プロジェクトの場合は、実際仕事
    ではなく、こういうのが世の中にあったら面白いよねという、何もない状態から
    仕掛けていく場合、何が優先順位として大事かというと、第1にモチベーション
    が重要なのですが、その次は、プロジェクトを実現するための人脈だと思います。
    人脈があるかないかが、プロジェクト成否の別れ道だと思います。

 

 Q2)カーボンオフセットがなかなか普及していませんが、どういう言葉で発信すれば
    普及しますでしょうか。
 A2)カーボンオフセットと言うと、確かに自分の廻りの人でも新しい印刷技術のこと
    ですかと聞かれます。それは、カーボン=CO2ということが分かってもらえて
    いないので、そもそものネーミングを変えるか。
     ・インパクトあるキャンペーンをやる。
     ・びっくりするような商品が世に出る。
     ・プレスがもっと頻繁に取り上げる。ということでしょうか。

 Q3)何かしら会社を越えて、社会的な活動をする自分は、何か原体験があって、だか
    らやりたい、やらなければいけいという思いのようなものが一環して共通にある
    ように思いますが、いかがでしょうか。
 A3)自分もそうですが、特にクリエイティブの人は、生まれた場所、育った場所が
    大きく関わっていると思います。間違いないです。私は尼崎という特殊な環境の
        ところに生まれ、育ったので、その失われたものを今でも捜し求めることがモチ
        ベーションの1つになっている気がします。

 Q4)持続可能ということが大事とおっしゃっておりましたが、実際にプロジェクトが
    終わるとなかなか続けるのが難しいのが現実と思うのですが、アイデアを作られ
    時に気を付けられていることはありますか。
 A4)例えばキャンドルナイトなんかは、電気を消すだけということで、敷居が低いで
        すよね。持続可能にするには、精神論ではなくシステムだと思います。そのシス
        テムを用意してあげることだと思います。


※勉強会当日は、勉強会のダブルブッキングで、講演の後半部分はビデオを廻して、別の
勉強会に行かざるを得なかった為、映像を見ながらのリポート起こしとなり、報告が大
変遅くなってしまいした。
 ビデオを何度も観直して、改めて福井さんの先進性、クリエイディブのユニークさ、取
り組まれたプロジェクトの数に圧倒されました。NPOやNGOの活動は、予算が充分
に取れないことが多いですが、それをクリエイティブ力で補うことができるのだという
ことを今回の事例紹介で、再認識することができました。
福井さん程の有能なクリエーターに、タイミング良くご協力いただける事は少ないと思
いますが、社会貢献活動を行っている多く人達が見過ごしているクリエイティブ力、ク
リエーターの活用は、社会に有益な活動を、楽しく、継続的(サステナブル)に行うた
めの大きな手段の1つなのではないかと思いました。

                                テキスト・文責:エコマーケティング 菅野弘達

 

 

 


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